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Okonogi's Blog ジャーナリスト小此木潔の個人ブログです
けいざい言論 Economic Journalism
9条改憲をめぐる世論調査で朝日新聞と読売の違いと共通点は何を意味するか
2019-06-02-Sun  CATEGORY: 政治

9条改憲に関する朝日と読売の世論調査から見えるもの

       根強い9条改憲反対  

 

憲法記念日に憲法に関する世論調査の結果を掲載するのはメディアの伝統だが、安倍晋三首相が201753日に「自衛隊明記」による9条改憲案をぶち上げて以来、この「安倍改憲」案をめぐる民意のありようが注目されている。

 

 朝日新聞と読売新聞を比べてみると、まるで正反対の結果が出たように読める。ステレオタイプ的思考にはまり込んだ人々は「そりゃそうだろ」と、わかったようなことを言うだろう。朝日は護憲派、読売は改憲派、だから自分たちの主張に沿って記事を書いているのだろうさ…と。しかし、事実はそうではない。両紙とも、いくらなんでもそういうデータ加工や改ざんはやっていない。財務省や厚労省とは違うはずである。

 

もっとも、あとで見るように、細かいところでは読売が設問で小細工している印象はぬぐえないのであるが、数字そのものをいじっているわけではない。

 

 両紙の調査結果をよく読めば、むしろ共通点が浮かび上がってくる。それは、9条改憲に対する国民の根強い反発である。

 

自衛隊は容認するが、それを憲法9条に書き込むのはどうか。詳しいことはよくわからないが、なんだか危険ではないか――。そうした国民の慎重な考えが、朝日、読売の世論調査結果に示されているのである。いくら自衛隊が災害救助などで国民から高い評価を受けても、そのことと憲法への明記は同一視するわけにはいかず、分けて考えたいとの意思が読み取れる。

 

朝日調査で64%が「9条変えないほうがよい」

 

朝日新聞が53日付紙面で掲載した全国世論調査(3月から4月にかけて、電話や対面方式よりも本音を答えやすいと考えられる郵送で方式で実施、有効回答2043、回収率68%)の結果によれば、憲法9条を変える方がよいと思うかとの問いに対する答えは「変えないほうがよい」が64%(昨年の朝日調査では63%)で、「変えるほうがよい」とした回答の28%(同32%)を大きく上回る結果であった。

 

日本国憲法を変える必要があるかどうかについては、「変える必要がある」38%に対して「変える必要はない」47%だった。なんとなく憲法のどこかは変えてよいと思う人でも、自衛隊の海外派兵への懸念などを抱えており、平和主義の象徴として戦争の歯止めになっている9条については変えたくないと答えた様子がうかがえる。

 

9条に自衛隊明記を提案している安倍首相の改憲案については「反対」(48%)が「賛成」(42%)を上回ったが、昨年同時期の調査(反対53%、賛成39%)に比べて差が縮小した。首相の改憲案については、9条を変えないほうがよいと答えた人の中から賛成に回る人も出ている様子がうかがえる。いまの自衛隊について憲法に違反していると思うかどうかの問いに対し、「違反している」は19%に過ぎず、「違反していない」69%だった。

 

今度の参議院選挙に合わせて衆議院を解散して、衆参同日選挙を行うことについては「賛成」42%、「反対」43%で拮抗した。

 

《表1 朝日新聞世論調査結果》

質問

  賛成

  反対

 

安倍首相は、憲法9条の1項と2項はそのままにして、新たに自衛隊の存在を明記する憲法改正案を提案しています。こうした9条の改正に賛成ですか。

 

 

 

42

 

 

 

48

 

読売調査は自衛隊明記に賛否が拮抗

 

一方、読売新聞が53日朝刊で掲載した全国世論調査(3月から4月にかけ郵送方式で実施。有効回答2103、回答率70%)によれば、憲法を「改正するほうがよい」は50%(昨年調査は51%)、「改正しない方がよい」は46%(同46%)で、改正賛成派が2年連続で反対派を上回った。憲法9条に自衛隊を明記する案については「賛成」47%、「反対」46%で、ほぼ並んだ。また、今夏の参院選で投票先を決める際に憲法への考え方を判断材料に「する」との回答が57%で半数を超えた。

 

《表2 読売新聞世論調査結果》

質問

  賛成

  反対

答えない

 

自民党は、戦力を持たないことを定めた憲法92項を維持したうえで、自衛隊の根拠規定を追加する案を検討しています。この案に、賛成ですか、反対ですか。

 

 

 

47

 

 

 

46

 

 

 

7

 

しかし、憲法9条の項目ごとに改正の必要性を聞くと、戦争放棄を定めた1項については改正する必要が「ない」との回答が83%(前回82%)で、戦力不保持などを定めた2項については改正の必要が「ある」44%(同48%)、「ない」51%(同47%)で、1項、2項とも改正する必要がないという声が強い。

 

憲法9条をめぐる今後の対応についての回答では、「これまで通り、解釈や運用で対応する」40%、「解釈や運用で対応するのは限界なので、第9条を改正する」35%、「厳密に守り、解釈や運用では対応しない」19%だった。ここでは解釈や運用での対応を支持する人が多く、9条改正を選んだ人は少ない。9条を改正すべきではないとの意思が国民の間に根強いことを印象付ける結果となっている。

 

今後の対応への回答からは9条改正すべきでないとする意見が多いにもかかわらず、その中から自衛隊明記による改憲案に賛成する人が出ているとみられるわけで、これは設問に応じて回答が微妙に変化するという世論調査の危うい一面を示しているとも考えられる。

 

自衛隊明記による9条改憲案について、朝日が質問の中でこれを改正案と明記しているのに対し、読売の場合は質問で「憲法92項を維持したうえで、自衛隊の根拠規定を追加する案」とし、この質問文には改正案だという明示的表現がない。このため、自衛隊明記については9条の改正に当たらないと誤解して賛成している人がある程度存在している可能性がある。

 

さらに読売の場合、設問の中に「自衛隊を明記しても、戦争放棄が維持される」ことを明記賛成の理由として選択肢の中に挙げてあり、これが一種の誘導質問となっている可能性がある。つまり、自衛隊を明記しても戦争放棄に変わりがないのだから、なにも問題は生じないと考えて賛成に回る人が出るような設問であるということである。実際、複数回答とはいえ、そのことを賛成の理由として挙げたひとは昨年調査でも今年の調査でも少なくない。(昨年は40%、今年は38%)

 

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まさかの共同通信世論調査-衆参同日選へ安倍首相の背中を押す?
2019-05-29-Wed  CATEGORY: 政治

まさかの結果が出た。共同通信が4月中旬に実施した全国世論調査の結果。驚くべきは、夏の参院選で改憲勢力が3分の2を維持するほうがいい、との回答がかなり多く、衆参同日選にしたほうがいいという回答も多かったことである。


W320Q75_共同世論調査19.4


全国の有権者を対象にした電話調査。4月18,19日の実施。固定電話の517人、携帯の515人から回答を得た。本音を言いづらいという人も目立つ電話調査の限界はあるにせよ、夏の参院選後の参院議席数について、「改憲勢力」が「3分の2を維持する方がよい」43.3%、「下回る方がよい」37.9%だった。(他にわからない・無回答18.8%)


安倍首相が改憲を実現し2020年施行を目指すと明言していることについて聞くと、この方針への賛成は40.1%、反対は43.9%で、安倍改憲には反対が多いようだ。


しかし、夏の参院選と同時に衆院選を行うことについては「同時に行った方がよい」47.8%、「同時に行わない方がよい」37.2%(他にわからない・無回答15.0%)だった。


これを読んで安倍首相は笑いが止まらなかったであろう。その後も場所を選ばず笑みを浮かべた表情がテレビに出ていた。

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あれ?読売がまともに見えちゃう池袋母子死亡事故の容疑者報道
2019-05-18-Sat  CATEGORY: メディアとジャーナリズム

母子が交通事故で老人の暴走車にはねられ死んだ池袋の事故で、読売新聞がはねた老人を「飯塚容疑者」と書いていることがわかった。いつからか知らないが、過失運転致死傷容疑で取り調べていると朝日も書いているのだから、そりゃ容疑者だろうという気がしてならない。いやそうじゃない、参考人として聴取しているだけで、被疑者調書はとっていないというのであれば、そのことをきちんと書かなくてはいけないだろうに。


W320Q75_朝日はまだ院長?0518夜


被疑者であるのに容疑者と書かないのであれば、おかしな話だが、百歩譲って書かない理由があれば、それを紙面で書いてもらいたいものだ。毎日新聞も。ほかの新聞やテレビもそうだ。


老人だから逮捕しないとか、けがをしたから逮捕しないとか、書いていたが、ではなぜ容疑者とかかないのかの説明がどの新聞もなかったような気がする。だとしたら、それは何故???


それに、飯塚容疑者に記者たちはやわな質問をしてだけで、肝心なことを聞いていないような気がする。ちゃんと立ち止まらせて、ゆっくり話を聞くとか会見させるべきだ。税金からたっぷり高給と高額退職金をもらい、しかも天下りで稼いで、十分な年金をもらっているはずなのに、なぜ医者のいうこともきかずに運転したのか。


タクシーでも使えばよかったのに。謝罪と反省の言葉をきちんと述べるのが人間として、とくに長い公人生活をしたものとして当然の義務だろうに。またそれくらいの質問はすべきなのが記者たちではないだろうか。明日にでも会見して、じっくり聞いてくれないと、メディア不信がつのる。記者たちが滋賀で保育士をいじめたような話も聞くが、その一方でマスコミは名士には甘いのか、上級国民優先なのかと思われるのが残念である。

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原真人著『日本銀行「失敗の本質」』(小学館新書)を読んで
2019-04-27-Sat  CATEGORY:

安倍政権の経済政策を一環して批判してきた著者の、気合のこもった一冊であり、政策論争も含めて経済政策と日本経済のリスクを理解しようとする人に読んでほしい良書である。


日銀失敗の本質


日本銀行の黒田総裁に対して記者会見で「異次元緩和」のリスクを繰り返し質問する光景が目に浮かぶ筆致は、読む者に実感を込めてメッセージを伝えている。


長年の取材の成果を生かし、なおかつ読みやすくできているところはさすがベテランである。著者の意見に賛同しないひともいるだろうが、そういう人々にこそぜひじっくり読んでもらいたいものである。そうして安倍政権の政策の功罪や将来へのリスクについて、多くの人々の冷静な議論が深まればいい。とくに国政選挙を控えて消費増税の先送りを政権がまたしても考えていると見込まれるいま、経済政策論争はおおいに展開されなければならないところだ。

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(多事奏論)令和「フィーバー」 忘れ去ってしまいたいのは? 高橋純子 …を読んで
2019-04-24-Wed  CATEGORY: 政治

素晴らしい。まなざしの優しさ、志の高さ。そしてことばの力。なんと評すべきか。そう考える前に震えるような感覚に襲われた。


W320Q75_takahasi kiji


文才というのは、恵まれた人にはあるものだ。高橋さんは特に。だからこそコラムニストなのであって、私なんぞが駄弁を弄すべきではないが、あえてそう書きたくなるほどの何かをご賢察願いたい。

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