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Okonogi's Blog ジャーナリスト小此木潔の個人ブログです
けいざい言論 Economic Journalism
調査報道とアジェンダセッティングに貢献した朝日新聞の記録ー『解剖 加計学園問題』(岩波書店、2018年12月)
2019-03-17-Sun  CATEGORY:

現代のメディア・ジャーナリズムにとって生命線ともいえる調査報道において貴重な成果となっただけでなく、議題設定機能を発揮した点でも高く評価されるべき加計学園問題の取材・報道の記録。これを読むと、朝日新聞が日本のジャーナリズムの中心を担っていることがよくわかる。担い手たちの姿勢と努力は称賛に値することを実感する。


解剖加計学園問題


この本のいいところは、朝日だけに執筆を任せていないことである。第三者による批評として、読売新聞OBのジャーナリスト大谷昭宏氏による、厳しいコメントを掲載している。これは岩波書店の書籍編集者のなせるわざで、書物としての価値を高めるのに成功している。


大谷氏の長いコメントの見出しは「歪められ、変形、変節したメディアと司法」というもので、森友・加計問題は、安倍政権の実態を明らかにしたが、結果として追い詰めきれなかった一方で、禍根を残す重大なことを引き起こした、という。


大阪亜地検特捜部が財務省や近畿財務局に強制捜査もせず、証拠も押さえないままで「操作を尽くし、証拠に基づいて不起訴とした」と繰り返すのは、政治権力の悪事を隠ぺいする欺瞞である。それなのに、朝日も含めたメディアがそのことを批判も指摘もせずにいるということは、おかしい、と大谷氏は指摘しているのである。


この重い指摘は大谷氏の面目躍如というところだが、この本の読み応えに貢献するところ大である。

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河谷禎昌『最後の頭取ー北海道拓殖銀行破綻20年後の真実』(ダイヤモンド社、2019年2月)
2019-03-13-Wed  CATEGORY:

「愛」があふれる著作である。夫人に、そして「たくぎん」、北海道、広くは時代にほんろうされた個々の人々への愛である。北海道拓殖銀行の破綻劇が、公的資金による銀行救済の条件として特定の銀行に厳しい国策として実行されたということ、つまり拓銀がスケープゴートにされたということを明快に述べていることが、その愛を強固なものにしているように思える。


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この著作が、朝日新聞紙面に掲載されたインタビュー記事をもとに追加取材のうえで実ったということ。その取材記者が拓銀の弁護人で今は故人となった人物の息子である日浦統(おさむ)氏=本書の構成も担当=であることが、インタビューと著作の実現に不可欠の要因となった。このことは、特記さるべき歴史的な縁。この著作は、河谷氏と日浦父子との共同作業として実現したといってよいだろう。そのことが読む人への熱いメッセージとなっている。


1985年から87年にかけて日銀が設定した融資枠そのものがバブルをあおったことを、著作は指摘している。同時にマッキンゼーの助言で導入した営業推進と審査機能の一体化が無謀な融資拡大を招いたことも明らかにしている。


そのうえで著者は、いまの黒田日銀も、脱デフレを掲げて異常な政策を続けていることに警鐘を鳴らす。次なるバブル崩壊への警世の書でもあるのだ。




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伊藤真ほか『9条の挑戦ー非軍事中立戦略のリアリズム』(大月書店、2018年11月)
2019-03-10-Sun  CATEGORY: 憲法

この本の記述で、私がとくになるほどと思ったのは、弁護士の伊藤真さん(日弁連憲法問題対策本部副本部長)による、自衛隊明記で憲法がどう変わるかに関するくだりである。


9条の挑戦


伊藤さんは、以下のように書いている。


  特に自民党案では、軍事力拡大への歯止めが効かなくなります。まず、法の世界には「後法は前法を破る」というローマ法以来の法原則があります。したがって、前法である9条1項、2項をそのまま置いておいたとしても、後法である9条の2が優先することになります。あたかも9条の2によって9条が書き換えられたのと同じ効果を持つのです。


なるほど。となれば、首相らが自衛隊について、役割が今までと変わらないとか、1項、2項の制約を受けるなどと説明しているのは、9条書き換えによる大転換を覆い隠すための便法なのだろう。


こういう危うさについて、書かれている本があまりにも少ないのではないか。また、新聞もろくにこの危険性について書いていないように思えるのだが?

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決裂した米朝首脳会談にも成果ありー北が誠意ある非核化に取り組むしか道はないということが見えた Failure of Trump-Kim is a Great Lesson for Peace
2019-03-03-Sun  CATEGORY: 政治・外交
ハノイでのトランプ・金会談が事実上の決裂となった原因が、だんだん見えてくるにつれ、いずれもが敗者となった様子が明らかになるとともに、それが双方の準備不足や誤算によるものである可能性が濃厚になっている。

準備不足と言うのは、トップ外交による突破力を過信したためにトランプ、金の両首脳とも双方の事務方を中心とした事前調整が不十分なままであるにも関わらず、一定の合意が可能であると思い込んでしまったことである。これには双方の官僚たちの責任が重い。

北側は、寧辺の核施設の放棄と検証だけで制裁の基幹部分を解除できると思い込んでいた。コーエンの米議会証言で窮地に立つトランプが外交の成果を求めて妥協してくれるとの確信があればこそ、ハノイ会談を国民に予告し、成果が得られることを大々的にPRしていた。

米側は、北のそうした対応ぶりを百も承知でいたにもかかわらず、それに同意するための条件(たとえば制裁の基幹部分を一部だけ解除することでとりあえず非核化のプロセス入りを承認し、次の段階の非核化を求めるという段階戦略を採るとか)について政権内で対応を詰め切れていなかった。おそらく政権内の意見対立(前のめりのトランプと妥協に否定的なボルトン、慎重なポンペオ)が克服できていなかったのであろう。意地悪く見ればボルトンら強硬派の勝利だったともいえようか。

米側は合意文書を用意するまではできたが、「寧辺+α」のαについてのやりとりで北が寧辺以外の秘密施設の存在を認めることすらできず、その指摘に態度を硬化させる可能性について十分な準備ができていなかった。その結果、トランプと周囲の意見の隔たりを埋めることができず、トランプが妥協で押し切るだけの確信を抱くに至らず、ポンペオら周囲の説得を受け入れて慎重姿勢に転じたということだったのであろう。

これは、慎重派からみれば成功であり、トランプにとっても不首尾で不満はあるが、コーエン元弁護人の議会証言で自身のロシア疑惑に火がついた段階で北との交渉進展はたいした得点にはならないと読んで、中断やむなしの判断に至ったということなのだろう。

一方、北側にとっては、不首尾ではすまない。国民に経済好転の期待を持たせて大々的なプロパガンダを展開したにもかかわらず、何の成果も得られない結果では権威失墜は避けようがない。北のメディアがいくら交渉進展などと取り繕っても、だれも信じてくれるはずがない。

怒り心頭の金委員長が、怒りにまかせて周囲を粛清するかもしれないが、それをしたところでむしろ傷を深くする。周囲はなんとか次のチャンスをと必死でなだめようとするに違いない。北側は、ボールがあたかも米側にあるかのように錯覚し、そう宣伝するしかない苦しい立場だが、暗礁に乗り挙げた交渉を再開するには、少なくとも北側の「サラミ戦術」と呼ばれるような小出しで消極的な手法を転換し、非核化への誠意ある対応へと本気で舵を切るしかない。

米側が指摘する秘密の核施設の存在を認めることが第一歩であり、寧辺に続いてその秘密施設も段階的に破壊し査察を認めること、さらに現在保有している核兵器の全廃についても工程表を示すことが重要な前提となろう。そうすることなしには、経済制裁の解除はできないのだということを米国だけでなく中国やロシアも一緒になって北に働きかけをしなくてはならない。

今回の出来事で、北がいかに経済制裁に苦しみ、その解除に向けて必至であるかがよくわかった。そのために何をなすべきか、北の政権の指導者たちが真剣に考えるべき条件が見えてきたことは、この交渉決裂の意義深い成果であるともいえよう。この事態を危機再突入への失敗劇にするのではなく、「失敗は成功のもと」として危機克服への足掛かりにできるか、が問われている。




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トランプのディール戦術? Trump's Tough DEAL @Summit with Kim
2019-02-28-Thu  CATEGORY: 政治・外交

物別れとなったハノイでの米朝首脳会談。

トランプ大統領会見にポンペオ国務長官を同席させたトランプの真意と戦略は…


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物別れは、あなたの判断かと聞かれて「私の判断とは言いたくない」と、キム委員長との今後の関係継続を望む様子を漂わせていたが、しかしかりにポンペオやボルトン補佐官がトランプに大胆な妥協を思いとどまらせたのだとしても(実際、部下たちとトランプの間にはある種の溝がある。それはキムと彼の部下たちの溝に似ているかもしれないが)、最終的にはそれが得策と考えて瀬戸際の取引戦略を発動したのではないか。


急がない。スピードが問題ではない。これから何が起きても最終的なゴールは明るい…


そんな物言いを会談開始時に披露し、期待値のレベルを下げていたのは、すでに物別れを十分に覚悟したいたのではないかと思わせる。

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